歴史の記録としての本を読む 2015年10月27日

book16 先日、ある書評をきっかけに読んだ本があります。タイトルは
「1968年のバイク世界一周旅行」(大迫 嘉昭:おおさこ よしあき 氏著)です。
 1964年、詳しい旅行ガイドブックはもちろん、インターネットやカーナビもない時代に、自費留学の試験を受けるために独学で勉強されて渡米した著者が、日系人に混じって働き、貯めたお金で世界一周旅行を成し遂げたときの記録です。
 夢を求めて渡米したものの厳しい労働条件で酷使される日系人の人々とのやりとりに始まり、東京オリンピックの開催や黒人の暴動、ケネディ大統領の弟の葬儀との遭遇など、当時の歴史を知る貴重な内容となっています。敗戦国の日本にこんなに苦しい時代があったとは、インターネットで情報がいとも簡単に手に入る現在でもなかなか信じがたい事実です。
 だからタイトルにつられて二輪車:バイク好きな方々が読んで期待する内容とは少し異なります。著者が言いたいのは、宇宙の中で人の人生など一瞬で終わるのだから、もっと自分の可能性を信じて、なにかやってみなはれ、挑戦してみなはれ、ということです。

 苦学されている方々をのぞき、親がまめにお小遣いを送ってくれる大学生の方々に、海外へ行って働いて旅費を稼げ、と言ってもなかなか素直に踏み出すことはできません。たしかにいまどき、進んで苦労するのはどんな物好き、と笑われる時代に、見知らぬ世界にわざわざ飛び込めと言われても難しいでしょう。
 もう70代後半にさしかかる著者の方が懸念されているのはおそらくここです。すべてに甘んじてなにもできなくなる大人になる前に、なにかやってみなさいと警告している気がします。
 著者と同年代だけではなく、今、高校生、大学生の多くの方々に読んでいただきたい本です。
 ちなみにこの本は自費出版に近いかたちということですが、好きな内容でむりやり編集されたり載せたい画像を減らされるなら、広告宣伝は苦労するかもしれませんがそれも充分な方法だなと感じました。
 そしてインターネットに情報はあふれていますが、情報量はもちろん、内容をしっかり自分のものとする場合も、あとで繰り返し読みたい場合も、電子書籍ではなく紙媒体だと気づかせてくれる機会でもありました。

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